柳楽優弥ファンブログ「ジェットコースターにのって」

柳楽優弥くんズキ。2021年Works「浅草キッド」「太陽の子」「ターコイズの空の下で」「HOKUSAI」「二月の勝者」CM:JRA

ネタバレ編レポート&感想(第二幕+全体)

後半いきます。
が、4日たったら大分もう記憶抜けてました。
また後半になればなるほどストーリーより心情を追うシーンが増えてくるので
時系列もちょっとあやふやです…。間違ってる部分は見直した時に直します…。
って、そもそもこんな長文需要あるんだろうか…。



第2幕もいつの間にかさりげなく登場人物が出てきます。
最後に左奥の扉から溝口が出てきて、敢えて少し音をたててバンと扉をしめることで
舞台が始まったことを知らせます。
さらにそのまませこせこと前に歩いてきて(溝口の歩き方がそんな感じなのです)
左横にあるスイッチをパンと押して暗転させます。
と、同時に溝口にスポットライト。

それから1年鶴川の喪に服し、さらに孤独になった、孤独にはいともたやすく慣れた
ということがナレーションで語られます。(ここからナレーションは水田くんになったかと)

そんな折、柏木が訪ねてきます。尺八のシーンです。
水橋さん実際に尺八吹いています。
柏木は言います「おれは花や音楽のような消えゆく美が好きだ。長持ちする美は嫌いだ」と。
そして、花をいけるのにそこのカキツバタをとってくれと溝口に言います。
カキツバタを携えて柏木の家にいくと、なんとあの軍人に乳を飲ませていた女性が。
彼女が柏木に生け花を教えていたのです。
ところが柏木はその女性に用済みとばかりに冷たくあたり、女性は家を飛び出します。
柏木の「追いかけてなぐさめるんだ!」という声におされ、女の後ろをとぼとぼと
ついていく溝口。
ただついていくしかできない溝口にとうとう女は「なんやの?!」と怒ります。
慌てて一礼して去ろうとすると、もう家が近いからと誘う女。
家にあがり、そこで初めて溝口は軍人とのやりとりを見ていたことを告白し、
「あなたは人形のようやった。美しかった」と言うのです。
ここ、原作にはないセリフなのですが、これがあることで、原作よりも溝口の純粋さが
引き立っていると思います。明らかに告白の一種なのですが、
柳楽溝口が言うと、見返りを求めない「事実をそのまま伝えた」感じがするのです。
でもだからこそ、女は「奇縁てこんなことやわ」と素直に喜び、
「あの時からうちを好いててくれはったやもん」と、あのシーンの再現を
する気になったのではと思えます。

ところが、いざ女性の胸に触れようとすると、またもやあのヴィィィィィンという
不快な音が鳴り響き、鳳凰と舞踏集団が蠢きはじめます。
耳を塞いで「また金閣や!」と叫ぶ溝口。
女は怒り、溝口に「帰れ帰れ」と追い払います。

女と触れ合おうとすると金閣が去来する溝口。
逃げるように走り回り、老師が芸妓と連れ添っているところを目撃するシーンとなります。
「ばかもん!わしをつける気か!」と一喝をして車で去った老師に対し、
溝口はお寺に戻ってから釈明の機会を待ちますが、米兵の時と同じように
老師は無言という名の拷問にかけます。
(老師からしてみれば、別に拷問にかけた訳ではなくて、自分の恥部を
掘り起こしたくないだけなんでしょうけどね…)

とうとう耐え切れず読経の途中で老師にかけよるも、何も言えず
何も言われず終わる溝口。(そして副司さんには怒られる…)
老師の態度に業を煮やした溝口は、芸妓の写真を買い、わざと
届ける新聞にはさんで渡します。
が、それすら触れられず、そこへ鶴川の代わりとして新しい徒弟が
挨拶にきます。
住職後継も危うくなるという危機感が溝口の中に生まれます。

だんだんと気力が失せ、学校に行かなくなる溝口。
ここで寝ころんでいる時に、トークショーに出てきた「なぜこの葉の先端が
これほど鋭角でなければならないのか」というくだりが入ります。
先端が折れたら、この葉は今までついていた名前を失い自然が崩壊するからか、と。

そうして、門限すぎに帰ってきた溝口に、老師がはじめて明言します。
「おまえをゆくゆくは跡継ぎにしようと思ったこともあったが、今ははっきり
そういう気持ちがないことを言うておく」と。
溝口の唯一の未来が絶たれた瞬間でした。

溝口は金閣を含むすべてのものから旅立つ必要があると、柏木に高利でお金を借り、
汽車にのって海を目指しますが、その汽車の中では、咳き込む父、自転車で蔑む有為子、
叱責する母、切腹で血だらけになった軍人、爽やかに笑って去る鶴川、腹を踏んだ情婦が
入れ替わり立ち代わり溝口の前に現れます。そしてまたも金閣の不快音。
「君は美しくない童貞だ」と言い切る柏木。
金閣寺の住職になるんよ」と言う母。
「跡継ぎにしようと思ったが…」と言う老師。

そして舞鶴湾に到着します。
「海や!ぼくを生んだ海や。ぼくのあらゆる不幸と暗い思想の源泉、
ぼくのあらゆる醜さと力との源泉の海や!」
舞鶴に戻った溝口は父親の葬式を追体験します。
(ここから不変だった舞台が初めて動きます。
中央ブロックを残し、後ろの黒板部分は奥へ、左右のドアや窓がある部分も
それぞれ左に右にと離れていきます。そのため、真ん中ブロックとそれぞれの
ブロックに通路のようなものができます。以降溝口はほぼ中央ブロックに
いて、逆の他の登場人物はそのブロックにはほぼ入ってこなくなります。これは
ある種心理的距離を示しているのかなと思いました)
棺に向かって「ぼくにもようやく金閣寺が美しさがわかりました」と話しかけますが
棺は燃えていきます。
その燃える様をみて、溝口は「金閣を焼けばいいんや!金閣を焼けば世界は
崩壊するんや!」という1つの結論を出し、叫びます。

その後暗転して、セリフだけで「この間身投げした人のようにずっと部屋から出てこんで、
一度のぞいたら、ただ部屋の真ん中でじっと座ってて、気持ちわるーて気持ちわるーて」
という宿のおかみの声が聞こえてきて、スポットライトが当たると、溝口が1人静かに
目を閉じて座り、脇に警官が立っています。
名前と場所を聞かれた溝口はどもることなく、強く「溝口」「京都鹿苑寺」と言うのでした。

結局、警官に引き取られ金閣に戻ると、そこには母がいたのでした。
「この親不孝者!」とののしり、旅費は盗んだのではないかと疑い、
とにかく謝って老師に許してもらうようにとだけ言う母。
(母は中央ブロックには一切入ってきません)

寺に戻った溝口を待っていたのは柏木もでした。
柏木は利子がたまり5,000円になっているから返せとせまります。
が、敢えて「走って」柏木から遠ざかり「ぼくを捕まえることはできない」
「海で走ってきた」と内翻足をあげつらうように言い放ちます。
柏木は「そういうことなら俺にも考えがある」と宣戦布告をして去っていきます。

寺に戻ると、老師から、柏木がきて金を返してくれなければ世に訴えると脅してきたので、
お金を払ったということを知らされます。これ以上何かやったら寺に置かないという老師。
(老師も中央には入ってきません)

再び柏木と会うと、そのことを認め、かつ「君を喜ばせようとこれを持ってきたんだ」
と溝口の前に封筒を投げ出します。
(この辺りで柏木は中央ブロックに「侵入」してきます。溝口にとって柏木はやはり
そういう存在なのかなと思います)
驚くべきことにそれは鶴川が差出人の手紙の束でした。
「君は鶴川と親しかったのか?」
「俺流にな。だが、あいつは俺の友達と見られることをひどく
いやがった。それでいて俺だけにこうして打ち明け話をしてたんだ」
鶴川のナレーションで手紙が読まれます。
…思えばこの不幸な恋愛も、僕の不幸な心のためかと思える。僕は生まれつき
暗い心を持っていた。僕の心はのびのびとした明るさをついぞ知らなかったように思える…
「これほんまに鶴川が書いたんか。嘘や」
「本当さ。鶴川は自殺したんだ」
「ほんまか。ほんまに親に認められない恋愛が理由で…」
「そうさ。こんなくだらない恋愛が理由であいつは自殺したんだ」
鶴川が柏木とこんなにも親しかったという事実
鶴川が「明るさを知らなかった」という事実
そして恋愛が理由で自殺していたという事実
溝口の中の“認識”が音を立てて崩れます。

それをみて柏木は声高々に「この世界を変貌させるのは“認識”だけだ」と言いますが、
溝口は言い返します。
「世界を変貌させるのは“認識”やない。世界を変貌させるのは“行為”なんや!」
そして、いつか鶴川に言ったように柏木にも言います。
「君とは進む道が違うということが今改めてはっきりした」と。

寺に戻ると、そこに父と老師の昔馴染みである和尚が老師の元に訪れていました。
老師が帰るまで和尚の相手をすることに。
(このシーンは中央ブロックで行われます。溝口にとって完全に内側に入れられる
人なのだと思います)

ここのやりとりもほぼ原作通りです。
「私を見抜いてください」
「見抜く必要はない。みな、お前の面の上に現れておる」

そうして、溝口はとうとう実行にうつします。
(ここから左右のブロックは完全になくなり、奥も真ん中の黒板部分だけとなり
後は中央ブロックが舞台上にあるだけとなります)

睡眠薬、マッチ、タバコ、そして短剣。
短剣の鞘を抜き、なめて眺めます。
(再見してみて、短剣は心象の武器なのかなと理解してみました)

「私の内界と下界との間のこの錆びついた鍵がみごとに開くのだ。
内界と外界は吹き抜けになり、風はそこを自在に吹きかうのだ」

またもやホーメイの音とともに舞踏集団が現れ、鳳凰は中央黒板の上から
上半身をのぞかせます。その中央黒板のところには大きな目が映し出されてます。

金閣寺は美しい。その美しさは完璧や!完璧すぎるんや!!」
絶叫しながら、後ろを振り向きナナメに短剣をふりかざすと、映し出された目にも
赤くナナメに傷が入り、だんだんとその中央黒板部分が後ろに倒れていきます。
それと共に鳳凰も降りてきます。

その鳳凰に向けマッチを落とすと、鳳凰がヴィィィィィンと音を出しながら
激しく舞います。異様な音がMAXで流れる中、徐々に一番奥にあった一面の無数のライトが
強いオレンジの光を放って、客席に向けて差していきます。最後は観客も目が開けられない
くらいの明るさで、激しい炎を観客にも想起させます。

あまりの炎の勢いに逃げる溝口。
そうして、近くの山に逃げ込みます。
そこは一転して静寂の世界。
腰をおろし、ポケットからまずは睡眠薬のビンをとりだし投げ捨て、
次にタバコを取り出してマッチで火をつけて。

大きくタバコを吸って吐いていく中で
溝口がだんだんと強い表情へとなっていきます。
もう一度深く吸い、吐きだし…すくっと立つと前をしっかりみて
どもりながらもはっきりと言うのです。
「い…生きよう」
そうしてもう一度周りを眺めてからタバコを一服し、そのタバコを落として
踏みつけると、さっと左手の階段をおりて客席脇通路を数歩歩きます。
もう一度眺め…少し戻り、1つ空いている客席(ここのA14の席)に
どさっと座ります。

そして、暗転。

少しして舞台全面に明かりがつき、軽やかに柳楽くんが舞台にかけのぼり
中央に走ります。舞台終了です。
沸き起こる拍手。
柳楽くんは右手を差し出し、次に左手を差し出し、キャストを呼び寄せます。
一同が揃うとお辞儀。
カフカの時の泣きそうな感無量な表情というより、
やりきったすがすがしさを感じるいつものちょっと照れたような笑顔でした。
(ちなみに2日目は微妙に中央にいなかったみたいで、右となりにいる水田くんに
袖引っ張られて指で「ここが中央だよ」って指されて場所動いてましたw
微笑ましかった^^)

初日は連続して4回。
2日目は3回で終わるかな…と拍手も少し落ち着いてきたところに
ぴゅっと柳楽くんが出てきて、「わ!きたきた!」って感じでした。

ふーーーー。
ここまで読んでいただいた方、本当にお疲れ様でした。
長すぎですよね。反省。
この先さらに全体感想書きますが、あの本当読みたい方だけどうぞ
という感じです…。


<全体感想>
まず柳楽くん。
手、肩、足と全身を使って表現したキャラクターはもちろんのこと
それにも増してセリフがかなり難解な作品だと思うのですが、
亜門流ディスカッションが効いているのか
ちゃんと消化して溝口として言葉を発してるのが本当に「役者」になったなぁと
しみじみ思います。
後、許されざる者以降、キャラクターがきちんと自分の中で確立するように
なったのか、受けの芝居も格段によくなったような気がします。

そして、なんでしょう。柳楽くんのまとった空気って。
私生活では間違いなく幸せなはずなのに、ああいう演技をさせると
孤独なオーラを発するんですよね。こちらはどちらかというと「誰も知らない」の時から
の天賦の才能という気がします。

今回結果的に初日と2日と連続で観劇したのですが、カフカの時にあった2日落ちなんて
全く感じさせない、むしろ2日目の方がより深みが出てきてるようにも思いました。
(1幕終わりの「強く!もっと強く!」の辺りでは動きが激しすぎてピンマイク(?)が
はずれてましたが、それでもテンションが変わることはありませんでした)
カフカの時、次に舞台やる時の課題かなーと思っていたので(上から目線でほんとすみません)
目の前であっという間に課題以上の出来を見せられ、私は柳楽優弥という役者を
甘く見すぎてると深く反省しました。
あと2回。どう変化しているのか楽しみです。

ではそれ以外で。
柳楽くんが素晴らしいのはもちろんなんですが、この「金閣寺」という作品を語る時に
山川さんの存在なしでは語れないのではと思います。
溝口にとって絶対的存在の「金閣寺」をどう見せるかって本当に難しいと
思うのですが、やっぱり演出家って亜門さんってすごいんですね。
長い髪に細い体躯、ホーメイと呼ばれる人の声が出すのに笛のような弦のような
不思議な音を響かせる。これでもう心象の「金閣寺」として成立していました。
また、鳳凰の周りにいる大駱駝艦のみなさんの独特の動きが怪しさを一層引き立てていました。
この演出あっての舞台「金閣寺」という気がします。

そしてもう1つ。舞台装置について。
本文の中でも時々触れましたが、2幕のラスト手前までほぼ全編「教室セット」
のままなのです。そこにはロッカー、イス、机などがあるのですが、これが
時には階段になり、時には金閣寺の扉になり、時には電車にもなる。
音と光で十分それが成立しているのが本当に素晴らしかったです。
こういう名作であればあるほど、つい肩に力の入った舞台装置にしがちですが、
そこで引き算ができるのが本当の演出家なんだなと改めて感心。

そして、ずっと固定舞台だからこそ、後半に向かってそのセットが分解し
なくなっていく様
に溝口の心変わりが読みとれ、ライトが全面的に光った時に
ひれ伏しそうなカタルシスを味わえるんですね。

そして最後の最後には何もなくなり…溝口の最後の行動を見守る。
いやほんと引き込まれました。

カフカといい、金閣寺といい、本当に原作と演出家に恵まれているなと思います。
大切な財産がまた1つできましたね、柳楽くん!