柳楽優弥ファンブログ「ジェットコースターにのって」

柳楽優弥くんズキ。2021年Works「浅草キッド」「太陽の子」「ターコイズの空の下で」「HOKUSAI」「二月の勝者」CM:JRA

感想ネタバレなし&あり両方

そろそろ眠くなってきたので、取り急ぎネタバレなしを。
[ネタバレありも追記しています]

予告編を見た時にも「かなり忠実なリメイクになりそう」と
書いた覚えがありますが、本編を見たら本当に「忠実なリメイク」と
なっていました。
…と書くと「ただのコピー」と思われがちですが、すごいのは、
「忠実なリメイク」ということと、「同時代の北海道を舞台」を
何の違和感もなく成立させ、さらには、「紛れもなく日本映画」に
なっていたところです。

1つは、インタビューなどで謙さんや李監督も言ってますが、
銃が刀になることでどうしたって「殺す」という行為そのものの
実感が違ってくるということ。
そしてもう1つが明確に「アイヌ」について触れていたこと。
つい日本は単一民族と思いがちですし、私も日常特に考えることなく
いるので、ガツンときました。アイヌにちゃんと触れている
邦画は少ないと思いますし、このようなメジャー作品となると
初めてと言ってもいいぐらいなのではないでしょうか。
(古い邦画には詳しくないので、色々あったらすみません)

そして、ここから先はネタバレになるので、ネタバレ編を追加した時に
書きますが、ある個所が明確に違う展開になっていて、
私はそこをもって日本の許されざる者の方が好きというか、
私の中の日本人的感覚にフィットした感じがしました。

でも、メインテーマはクリント版が作り上げたものと寸分もずれてないですし、
そここそが重要なメッセージなので、クリント版への尊敬は少しも変わっていません。

「暴力は暴力しかよばない」
「どんな理由があれ暴力を行使したら許されざる者となる」

それは地位の高い低い、男女年齢問わずに突きつけられる現実です。
今も中東をはじめとした世界中で起きている現実です。

…という意味において、重い重い映画です。
暴力シーンも多いので、妊婦さんにはおすすめしません^^;
(ちなみにPG12です)

が、一方で日本の原風景を21世紀になってこんなにも妥協せずに
フィルムに焼き付けた映画もそうないと思うので、日本人には見て欲しい映画でもあります。

ちなみに、クリント版がこの世になければ、日本版は生まれなかったものなので、
時間がある方はクリント版を観てから、日本版を観てもらえると時系列的には
正しいかなと思います。

夜中に推敲もせずに書いてるので、とっちらかってるかもしれませんが、
まずはここまでをUPして、ネタバレは明日にでも…。

おやすみなさーーい。(明日のWSもかなり扱ってくれそうー!)


あ。追記。大事なこと忘れてました。
エンドロールにいっぱい並んだ北海道の地元の団体や機関の名前。
あれを見た時に改めて、北海道の方達の全面協力あっての映画だなと思ったし、
李監督が「実はエンドロールがみどころ」的なことを言っていたのは
本当だったんだと、実感しました。


さて、ネタバレ編です。

「北海道にしたこと」「刀にしたこと」から原作よりも
厳しい自然(死にそうなぐらいの寒さと画面からもわかる)と
リアルな痛みを伴った、さらに重いものになっていました。

そのせいもあるのかもしれませんが、それぞれの「許されざる面」も
くっきりしていたような気がします。

そもそもなつめが人を笑いものにした。
兄弟がなつめを傷つけた。
女郎宿の亭主は馬で示談した。
お梶が殺しにお金をかけた。
北大路は嘘をつき、人を脅した。
姫路は情勢によって人を変えて太鼓持ちし続けた。
金吾は嘘をつき、十兵衛を賞金稼ぎに連れ出した。
大石は人を殺した。
十兵衛は人を殺した。
沢田も人を殺した。

ここには応援したいヒーローもいないし、全部を否定すべきヒールもいない。
皆、自分の人生を生きたらこうなった。

でも、1つだけわかるのは、「暴力は暴力を呼ぶ」ということ。
例え、なつめがやったことが許されないとしても、切らなければ
後の悲劇は起こらなかった。
例え、兄弟が一時の激昂で切ったことが許されないとしても、
女郎宿の亭主が馬で示談したことが許されないとしても、
殺しにお金をかけなければ、後の悲劇は起こらなかった。

その意味では、多分それを身をもって理解して、
殺すことをやめる沢田は希望であって、
一方で皆殺しを選んでしまう十兵衛は絶望だと思うし、
この映画のテーマを考えた時にはそうあるべきと思います。

そこで、私がネタバレなし編に書いた「クリント版との違い」の話に
なるのですが、クリント版のラストは、マニー(クリントの役)は生きて
ちゃんと家に帰って、しかも字幕では「のちに商人として大成した」
というような内容が流れるんです。
なので、本家版の感想にテロップの意味が消化出来ないと書きました。
ハリウッド的にはやっぱり主役が一番成功者じゃないとだめということなのかも
しれないですね。

(別に柳楽くんの出番が増えているから、とかではなく)
やっぱり一番皆殺しをした人が一番成功するのでは映画のテーマが
ぶれてしまうと思うので、私はこちらのラストの方が好きというか、納得しました。

でも泣いたのは、十兵衛が物書きに「女郎とアイヌのことは書くな」と言った
ところです。十兵衛も金吾もそういうところでの人道ははずれてないので
余計悲しさが増します。

とにかく、重いですが「こういう日本映画がつくられる映画界でよかった」と
思える作品でした。

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最後に役者さんのことを。
もう全ての役者さんに拍手を贈りたい。
素晴らしかったです。
女郎や町の男は北海道の役者さんだったり、普通のエキストラさんだったりも
使っているようなんですが、そういう方も含めて、ちゃんとその時代を生きていたと
思います。
そして、全ての役者からその力を引き出した李監督はやっぱりすごいんだなと。

柳楽くんについては、私はもう正直公平なジャッジができなくなってきてるので
どうにも難しいです。
でも舞台挨拶をしていた彼とは明らかに別人でした。
李監督のオリジナルの脚本部分もあって、キッドより豪快で、キッドより繊細
というより鮮明なキャラクターになっていて、スクリーンの印象はより強く
なっていると思います。
個人的には、哀しみの演技より、お調子者の演技の方が新鮮だったので
記憶に残ってます。(後、身軽さ!木にのぼったり、柵のぼったり。すごい!)

ちょっとネタバレ編は1日置いてから書いたので、大分印象抜けてるところも
あるかもしれませんが、こんな感じです。