もう事前の情報で相当気合入れてみたんですよ。
「どんなに凄惨なシーンがあっても頑張って観るぞ」と。
でも、そう思って観たからか、私の中ではぎりぎり目をつぶらなくても
全編観れるものではありました。
柳楽くん演じる泰良は確かに理由はほとんど語られず
ひたすらターゲットを探し、殴ります。
でも、私はそこにある種の矜持を感じたんですよね。
「ターゲットを探す」というのは逆を言えば、無差別ではないとも言える訳で。
映画を見るとわかるのですが、明らかにターゲットにしていない層があるんです。
しかも映画の冒頭とラスト辺りで、ざっくりとではありますが
泰良の育った環境がわかります。
何より弟の将太(虹郎くん)の兄に対する行動を見ていたら
100%異常者ではないこともわかります。
これはもう、私が女性だから、かつ柳楽くん視点で見ているからだと思うのですが、
それだけで母性本能が起動して、彼の人生を否定もできなくなってしまう訳です。
(だめんずに惹かれるパターンじゃん!)
そしてむしろ、「普通にその辺にいそうな」裕也(菅田くん)や那奈(小松菜ちゃん)
の方が、それこそ家庭などの背景も一切出てこないし、肯定できる要素がない。
でもそれは、私がこの映画を第3者として観ているからであって、
物語に出るとしたら、私たちはむしろ「普通にその辺にいそうな」人たち側であって、
そのあたりでもう、悪って、犯罪って、暴力ってなんだろう…という指針を見失います。
柳楽くんは、本当にほとんどセリフがないですが、圧倒的説得力があります。
暴力というものに憑りつかれた迷いのない野獣。
菅田くんと小松菜ちゃんは逆に小市民としてのその場しのぎという部分を巧みに
演じています。
虹郎くんはまさに以前の柳楽くんが演じていたような役で、ただ佇むだけで
孤独感が溢れていました。
それ以外に、でんでんさんは安定のでんでんさんで、
池松くんは贅沢な使い方だったし、天音くんは1シーンだけだし、
匠海くんは嫌な奴演じ切ってたし、
これが商業作品1作目とは思えない贅沢な布陣ですが、きっとみんな
「真利子監督の作品なら!」ってことで集まったんでしょうね。
凄いことだ…!
で、監督いわく「柳楽くんの熱が伝わった」役者同志のバチバチ感が
フィルムにも充満していて、そこにさらにノイジーな向井さんの音楽がのって
研ぎ澄まされた映画になっていました。