2007年からブログを書き始めて早14年。
最初のころは「柳楽くんが出てる映画は観る」というスタンスでしたが、柳楽くんが色々あってほぼ再出発となった頃から、「ちゃんと映画全体がわかってないと柳楽くんの映画界のポジションも見えてこない」と思うようになり、自分なりに色々な映画を観るようになりました。(現在はまたちょっと違って「柳楽くんのフィールドである映画界を盛り上げたい」という気持ちですが)
その中で一つ思ったのは、「柳楽くんはだんだんいい演技するようになってきた。でも作品のヒットや質と合致したものがなかなか出てこない」というものでした。
『ディストラクション・ベイビーズ』はシネフィル界隈では高評価でしたし、『太陽の子』も志高い作品ではあったものの、戦争が題材ということで一般の人にまで届いたとは思えなかったですし、『銀魂』や『今日俺』は飛び道具的なキャラクターで映画界隈での評価にはならなかったので、そろそろ作品規模も大きなもので質も高く、多くの人に観てもらえる作品をと思っていました。
で、『浅草キッド』。最初の業界試写から押し寄せる高評価。
そして何より、予告。
「あ、これはキタかも」
そう思ってハードル上げつつ、当たったFilmarks試写を観ました。
泣いたなぁ。
多分一般の人が観た時の涙とは全然違う涙が。
10代後半、柳楽くんが必死にもがいていた頃。
そして
「いつか絶対実力あげて、またスポットライトにあたって喝采を浴びるんだ」
それだけを信じて応援していたあの頃。
あの頃信じていた未来に今立っていると確信できたからの涙でした。
開始して数分でわかる高いレベルでの演技。
ツービートとしての漫才。
そして、文字通りスポットライトを浴びて楽しそうに跳ねるタップダンス。
何よりそれらをすべて何のストレスもなく見せてくれる脚本・演出。
私がずっと応援してきたのは、いい作品の中で、その「いい作品の間違いなく主要パーツ」として演技をしている柳楽くんを観たいからで、まさにそれが今目の前で繰り広げられていたから、です。
ああ、これだ、と思いました。
私が昔描いていた未来。信じていた未来。
14歳の頃、「サッカー選手と俳優と迷っていた」と言っていた少年のファンになったのは、「少年性」を好きになったのではなく、「この素直な感性のまま育った時こそ、この子はすごい役者になるんじゃないか」という将来性を買って好きになったので、なんだかもうそれが目の前で現実になっていて「うわぁぁぁ」と湧き上がる感情を抑えれなかったです。
よかったなぁ。
信じてずっと応援してきて本当によかった。
ありがとう、劇団ひとり監督。ありがとう、柳楽くん。
と、前半は感傷的な気持ちで観ていましたが、後半はもう物語に引き込まれ物語に泣いてました。
あんなん泣くしかない。
何より、見ていて気持ちよかったのは、すべてのシーンやセリフにちゃんと意味があったこと。前半に出てきたセリフが後半に回収されたり、タップダンスの靴に意味を持たせたり、タップそのものもちゃんとストーリーに意味があってすべて入っていたり、「普段からぼけろ」の精神を師匠の手のエピソードに繋げたり、もうすべてが流れるようで素晴らしかったです。
しかも、門脇麦ちゃんの役は、オリジナルキャラなんですよ!
原作ではワラワラ出てきていた踊り子さん達をうまく凝縮して一人のキャラクターにしただけでなく、そのキャラクターを使ってストーリー自体うまく組み立ててる(実は歌手を目指しててフランス座で歌うけれども…)のとかもう脱帽でした。
そして、柳楽くんは間違いなくその「ストレスのない流れ」に大きく貢献していたし、大泉洋さんも門脇麦さんも鈴木保奈美さんも、そして、ナイツの土屋さんもみんなみんな作品にきれいに合流していて一つになっていたと思います。
で、それは結局のところ「なかなかOKを出さない」という劇団ひとり監督が最終OKを出したテイクな訳で、最終的には「劇団ひとり監督すげえ!!」になってしまうというオチ笑。
柳楽くんって、本人はすごい辛いと思うけど、厳しい監督につくとめっちゃ伸びるので(蜷川幸雄さん、李相日監督)、今回もまさにそれだったなぁと実感。数年おきに厳しい監督と一緒にやってもらいましょう笑。
ええ、柳楽優弥、ここがまだ到達点ではありません。
ここからいきまっせ!
7年前に劇団ひとり監督が脚本持って配給会社回ったらことごとく断られ、最後の頼みの綱でNetFlixだけが映像化してくれた、というのを聞いた時、NetFlix様ありがとう…!と思ったし、今も「いつでも何度でも観れる」の最高!と思いますが、やっぱり映画館で観たかったというのが唯一の心残りです。