柳楽優弥ファンブログ「ジェットコースターにのって」

柳楽優弥くんズキ。2021年Works「浅草キッド」「太陽の子」「ターコイズの空の下で」「HOKUSAI」「二月の勝者」CM:JRA

「星になった少年」

こちらはDVDでしか鑑賞してません。

当時は、単館上映系の「誰も知らない」からいきなり商業バリバリの映画主演で
びっくりしたのを覚えてます。
そして「いいとも」などに出演しているのをみて
相変わらずテレビの前でほとんどしゃべれないんだなぁ…と
嬉しいようなもどかしいような気持ちで見ていたことも。


さて映画本編。

実話を基にしたストーリーということで、はっきり言って観る前から
話の筋がわかってしまい「感動して泣く」というところまでいかなかった。
一番グッときたのはやっぱりラストの常盤さんが泣くところではあったけれども
うーん、なんか演技&演出が私にはしっくりこなかった。
蒼井優ちゃん演じる女の子とはあそこで初めて会った設定みたいなので
あの場では話だけ聞いて、一人になったところで耐えられなくなって大泣きするとか…。
お葬式では泣きの演技がなかっただけに、いきなり初めての人の前で大泣きする
感じがちょっとスルっと入らなかったのです。私の中では。
後、予告で観ちゃったのもあるかもなぁ…。

そしてその蒼井優ちゃんの存在も中途半端だった。
あ、これは優ちゃんのせいではなく、脚本のせいだけど。
出会ってから仲良くなるまでが強引なんだよね。
優ちゃんかわいいのにもったいない……。

でも、「象使いになる少年成長物語」としては結構できてたんじゃないかなぁと思う。
っていうか、本人がリアルに成長してるからなぁ~(笑)
やっぱり子どもと動物には敵わないってヤツですね、まさに。

その辺は亀山さんの目のつけどころがうまかったんだろうなと。
おそらく亀山さんも彼が「才能はあるけど、技術はない」ことをわかっていて、
だから演技よりも動きで見せる、動物と一緒に魅せる、なおかつ柳楽くんを
象使いにさせていくその過程をある意味ドキュメンタリーとして撮っていくことによって
フォローしようと思ったんだと思う。(勝手な妄想だけど)
柳楽くんにとってはそのドキュメンタリーな部分が「誰も知らない」に通じるところもあって
やりやすかったんじゃないのかな。
(実際、柳楽くんはシュガスパのインタビュー等で盛んに
「『誰も知らない』は是枝監督がうまく撮ってくれただけだし、『星になった少年』は
象と慣れることが先だった。シュガスパが初めて演技で勝負になって不安だった」と
語っている)

そして、それは成功していると思う。
彼が象に驚き、近づき、慣れていくその様は彼独特の存在感とリアル感をもって
わたしを惹きつける。
例えところどころ棒読みに聞こえても、彼が見せる「素に見える」(けど、当然のことながら
素ではない)表情の演技と嘘のない動きが帳消しにしてくれる。

素に見える表情と嘘のない動き。
同世代の子と何が違うんだろう、と考えて気づいた。
彼のすごいところは「いいところを見せよう」と思ってないところなのだ、と。
ただ、その役として生きているから、そんなことは思わないのだ、と。

中高生の時期ってある意味自意識過剰で「かっこよく見せたい」と思うはずなのに
彼はその「かっこよく見せられる最高の場」であるはずのスクリーンで
脱力するぐらいフツーに存在している。
食事のシーンなんかまさにそう。カメラがあるなんて思ってないぐらいフツーに食べてる。
あんまり行儀よくないところを含めて(笑)
「役作り」をした上で食べてるというのでもなく、「哲夢くんとして」フツーに食べてる。
夏木さんがいった「ドキュメンタリーな演技。その役になるのではなく、生きている」っていう
感覚がおそらくそれなんだろうと思う。
こういうのを観る度に私の中で心地いい衝撃が走るのだ。

そうそう「素に見える」けれど素じゃない、っていうのは
あのイモリ(?)食事シーンでもわかる。
嬉々として食べているけど、「何回も食べたくないから1回で終わるように頑張った」って
言ってた(笑)
それを知って観てたけど、やっぱりおいしそうに食べてるように見えた。
うん、根性ある子や(笑)
※…と思ったらその後入手した本によると「食べるところには鶏肉をつめてた」らしい…
おいおい、私の誉めはなんだったんだ(汗)
でも、なかなかカットの声がかからず結局そうじゃない部分も食べたらしいけどね。


カンヌ受賞後、まだ中学生……と色々と微妙な時期に選んだ作品だけれど、
結果的に(映画としての出来は別として)アタリだったように思う。
見知らぬ土地・人・食事・そして象使い、おそらく演技以外にも彼に与えたものは
大きいと思うから。

最初にこれを企画したであろう亀山さん、
カンヌ後をこれにしようと決めてくれた事務所さん、ありがとうございます。

となぜか礼を言いたくなる私。